TAVI治療を受けた患者インタビュー (2/3)

これまでは看取るしかできなかった方達の命を救う事が出来る事がすこく嬉しいですね。

インタビュアー

江頭先生に受診されていたとのことですが、同じ循環器内科の林田先生に受診されたのはいつ頃からなのでしょうか?

林田医師

2013年に入ってからですね。夏頃、大動脈弁狭窄症の治療に関して、どうしたら良いかというご相談が江頭先生からありまして。大動脈弁狭窄症は心臓の弁がすごく硬くなって、そこから出る血液量がどうしても少なくなるので、どんどん進行していきますからお薬では完治しません。弁自体を治療してあげないといけないのです。

インタビュアー

大動脈弁治療は開胸手術が一般的ですが、山岸さんの場合はなぜTAVIでの治療になったのでしょうか。

林田医師

弁自体の治療は開胸手術ができれば、それが標準的な治療ではあるのですが、山岸さんの場合は頭の血管に一部細い所があって、人工心肺を回してしまうと脳梗塞の危険性が高いという懸念がありました。当院では外科、内科、その他の科の医師が集まるハートチームで週1回カンファレンスを行っているのですが、そこでみんなで山岸さんにとって一番良い治療法についてディスカッションした結果、新しい経力テーテル大動脈弁治療、TAVI(タビ)と言いますが、TAVIを行うことになりました。

インタビュアー

山岸さんはTAVIで治療を受けられましたが、どのような患者さんでもTAVIを受けることができるのですか?

林田医師

たとえば年齢が若い方や他の疾患の心配が無いなど、外科的な手術を問題なく受けられる患者さんには開胸手術を行います。また、ご高齢の方でも手術の危険性が低い方に関しては、開胸手術が標準的治療です。
山岸さんの場合は、先ほども少し触れしたが、脳の血管が一部細くなっており、人工心肺を回すことで頭にいく血流が減り、脳梗塞になってしまう可能性がありました。そうすると心臓の治療が成功しても後遺症が残るかもしれないということでハートチームで議論し、TAVIでの治療を決定いたしました。

インタビュアー

TAVIは新しい治療法ということでしたが、それに対して不安はありませんでしたか?

山岸さん

私の娘がいろいろ調べてくれましてね。林田先生が御苦労されて海外で(TAVIの)お勉強をされていたという事を知りまして、信頼できる先生だと感じました。そういうご苦労をされて、日本で最初にプロクターというTAVIの指導医資格(企業資格)を取得されたそうですから、私は林田先生に対して絶大な信頼感を持っております。そして、そんな信頼している林田先生から、忌憚のない言葉で「山岸さんの大動脈弁狭窄症は治療しないでおくと、普通1,2年で命を落としてしまうでしょう。でも、治療を受ければもっと元気に長生きできる可能性が出てきますよ。」と言われたのです。それで、私は心底からTAVI治療を受け入れました。

インタビュアー

TAVIはどのように新しい治療なのでしょうか?

林田医師

今まで大動脈弁狭窄症の患者さんで、開胸手術が出来ない方達はどうなっていたのかというと、亡くなられていたんです。そういうとき、私のような力テーテルインターベンションというカテーテル治療を専門にしている内科医は何も出来なくて、ただ看取ることしかできないのです。それはすごく無力感があります。しかしTAVIという治療法のお陰で、これまでは看取るしかできなかった方達のその命を救う事が出来るようになったのがすごく嬉しいですね。
また、皆さんすごく良くなって退院されて、外来で再びお会い出来ることもすごく嬉しいです。慶應義塾大学病院ではこれまで11人の患者さんにTAVIを行いましたが(インタビュー実施時点:2013年12月)、皆さんすごく良くなって、1日で集中治療室から全員出られていて、重篤な合併症というのは1例も出ていないですね。そして、約1週間くらいで退院されています。最短では3日後に退院されていますね。

山岸さん

私は10月25日に治療をうけて31日に退院ですから、約1週間入院していましたね。

インタビュアー

心臓の治療ですが、入院の期間は短いのですね。

林田医師

総じて開胸手術よりは入院期間が短くて済むという事で、患者さんの負担も軽いです。特に山岸さんは82歳とまだお若い方ですが、患者さんにはもっとご高齢の方もいらっしゃいます。例えば90代の患者さんですと、1日でも早く返してあげたいですね。年配の方は、寝ている時聞が長くなると筋力も落ちてしまいますし、どんどん動けなくなるという悪循環に繋がりますので、長期間入院するというのは逆に危険なこともあります。
私は治療をするだけではなくて、患者さんにご自身で、歩いてお家に帰っていただくという事をすごく重視しています。そして、以前と同じくらい動ける、日常生活を以前と同じようにキープできる、もしくは改善できるようにしていければと心がけております。

インタビュアー

これからもどんどんTAVIの患者さんが増えていきそうですね。

林田医師

とても増えてくると思います。
大動脈弁狭窄症は年齢を重ねるとだれもがかかり得る病気ですし、ご高齢とともにどんどん進行していきます。特に日本は高齢人口が多いですので、患者さんは多くなるでしょう。
また、大動脈弁狭窄症自体が直接的に命に関わる病気ですので、TAVIは非常に大事な治療法だと思います。現在の製品・医療機器の安全性がさらに高まったり、今後は治療を受けて、元気に日常生活を営まれる患者さんの数も増えてくると思いますので、そうするとTAVIはますます増えていくのかなと思いますね。

自覚症状とTAVI治療後

インタビュアー

山岸さんがTAVIの治療を受ける前の話に戻ります。治療を受ける前は、息苦しさなどの自覚症状は感じられていましたか?

山岸さん

はい。急な坂を登るような時は息苦しさを感じましたね。治療を受けてみてから、あれは大動脈弁狭窄症が原因だったとわかったのですが、治療を受ける前は年を取ってきたからこうなったのかと思ってしまいました。とくに医学に詳しくもなかったですし、普通の人間の心理だとそう考えてしまうんですね。だから、むしろ休を鍛えて耐えられるようにしなくてはと考えて、無理に階段を上るようにしたり、タクシーは使わずに地下鉄に乗るようにして、地下鉄の階段も上がり下がりするような事をしていました。でも、それももちろん江頭先生にやめた方がよいと言われました。その後も20分の散歩をしておりましたが、いま振り返ると、当時はすこし歩くのにふらついたりしていましたね。

インタビュアー

治療が終わったあとは、階段を上る時も以前より楽になりましたか。

山岸さん

実は治療後も少し心配で、階段は避けていたんです。けれど2、3日前から5段くらいの階段を上がるようにいたしまして、前と比べると何かしら楽になったと感じました。ですからさらにもう少し頑張れるかなと思っています。あとは例えばお風呂に入るときなどは治療前と比べてずいぶん楽になりましたね。それは前よりも実感しています。

インタビュアー

TAVIを受けられたすぐ後、リハビリは受けられたのでしょうか?

山岸さん

受けました。リハビリ科というのがありましてね、そこに行きました。ゆっくり歩いて部屋を1周しましてね、それで休患をするのです。動くだけじゃなくて、休息が必要だという事を認識しました。3分くらい歩いたら、1分くらい休息するという形式で。その次は2周して休息と、あまりどんどこやり過ぎないようにしなければいけないと言われました。そして段々とその負荷を多くしていくというやり方ですね。ただ私の場合は、あまりにも退院が早かったものですから、リハビリ科には1回しか行けませんでした。

インタビュアー

1週間の入院ですと、そうですよね。
慶應義塾大学病院では、TAVI治療後の検診・リハビリについてはどのようなごとをお勧めしているのでしようか?

林田医師

今は1ヶ月後ぐらいで検診しています。山岸さんも今日拝見しましたが、血液検査、エコー検査も行い、とても順調に経過しています。お話を聞くと今はあまり運動されていないみたいなのですけど、運動もお勧めしています。
今日、山岸さんにお勧めしたのは、ある程度定量的に運動することです。毎日動くということもすごく重要ですし、病院内でどのくらい運動して良いかという事を、ある程度客観的に評価して、このくらいならば大丈夫ですよ、と明らかな目安を患者さんに提示して差し上げるということも重要かと思います。体調がよくなっても、少しまだご心配で制限されていたりする場合があるので、基準が明白になれば良いかなと思っていますね。
山岸さんの場合はゴルフもそろそろ、大丈夫だと思いますよ。

山岸さん

その言葉は本当に嬉しいですね。

※インタビュー実施:2013年12月
このインタビュー記事はエドワーズライフサイエンス株式会社の一般向けパンフレットを元に再構成しています。

"Road to TAVI"

"Road to TAVI"
TAVI元年。慶應大チームの軌跡をリアルタイムで紹介します。 重症の大動脈弁狭窄症で、開胸手術による治療が不可能または 非常に困難な患者さんに対する全く新しい治療です。

経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI

重症の大動脈弁狭窄症で、開胸手術による治療が不可能または 非常に困難な患者さんに対する全く新しい治療です。大動脈弁をただバルーンで拡張するだけでなく弁を留置してくる治療法です。

小切開心臓手術

最大の特徴は、「小さな創で患者さんに優しい」手術を行っていることです。当院は、低侵襲心臓外科手術、ポートアクセス手術のパイオニアとして、日々技術革新を進めています。

大動脈
ステントグラフト

開胸や開腹を要さない低侵襲な治療法。当院は、国内有数の豊富な大動脈瘤治療実績を有し、特にこのステントグラフト治療は人工血管手術とともにトップランナーとして近年さらに増加し続けています……

心房中隔欠損のカテーテル治療 AMPLATZER

慶應義塾大学 心臓血管低侵襲治療センターは、循環器内科と心臓血管外科が協力し、日本一患者さんにとって優しい治療を提供します。

経皮的中隔心筋焼灼術 PTSMA

症状のある、薬物治療抵抗性の閉塞性肥大型心筋症に対して、カテーテルを使用して純エタノールにより閉塞責任中隔心筋を焼灼壊死させる治療法です。最大の特徴は「低侵襲性」(体力の消耗や傷口が小さい)です。

バルーン大動脈弁形成術BAV

とてもシンプルな治療法で、すぐには開胸手術が難しいような状態の悪い方であっても、この風船治療を行うことで状態が一時的に顕著に改善されます。

経皮的僧帽弁裂開術 PTMC

カテーテルを用いて足の動脈から直接心臓に到達、硬くなった弁にイノウエ・バルーンを運び、そこでバルーンを広げて、硬くなった僧帽弁を広げる治療。心臓手術に比べ開胸術でなく、患者さんの負担は少ない。

バルーン肺動脈形成術 BPA

局所麻酔下で行う侵襲性の低いカテーテル治療。PEAの適応外とされる高齢者、全身麻酔が困難例、末梢型のCTEPHに対しても治療可能である。複数回の治療により、PEAと同様に根治が期待できる。

慶應義塾大学病院 心臓血管低侵襲治療センター
Keio University School of Medicine Medical Center for Minimally Invasive Cardiac Surgery

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