僧帽弁狭窄症 Mitral stenosis; MS
概要
僧帽弁狭窄症とは、僧帽弁自体が硬くなり、左心房から左心室への正常な血液の流れが悪くなる状態を指します。
原因
ほとんどがリウマチ熱が原因でおこります。日本では衛生環境の改善に伴い、リウマチ熱自体の数が減って、僧帽弁狭窄症の数も減っています。
症状
小児期にリウマチ熱にかかると一部の患者さんで、7~8年で弁の障害が出現し、さらに無症状の時期を10年以上経て、息切れ・呼吸苦、むくみなどの心不全症状を発現します。僧帽弁逆流症同様に心房細動の出現で動悸を感じることもあります。
診断
僧帽弁逆流症と同様に確定診断は主に、経胸壁心臓超音波検査によって行われます。より精密な評価のために経食道超音波検査や心臓カテーテル検査が行われることもあります。
治療
症状や心房細動の出現や心臓内に血栓ができたりした場合に、カテーテル(細い管)による治療や外科的な心臓手術の必要があります。ただ年齢、弁の性状、心臓内血栓の存在、僧帽弁逆流症の合併・程度により、治療方法を選択します。
外科的な心臓手術は大きく分けて、直視下交連切開術(OMC)と僧帽弁置換術に分かれます。前者は硬くなった弁や弁の隙間(交連)をメスで切り込みを入れ、弁の動きを改善させ、血流の流れをよくする方法です。後者は僧帽弁逆流症の置換術と同様で、自分の弁を人工弁に取り替えます。
カテーテルによる治療法は心臓内に血栓がないこと、僧帽弁逆流症が重度でないことが前提で、弁の硬さなどを総合的に判断して治療が行われます。この治療法は経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)と呼ばれます。カテーテルを用いて足の動脈から直接心臓に到達し、硬くなった弁にイノウエ・バルーンという風船を運び、そこでバルーンを広げて、硬くなった僧帽弁を広げる治療です(図1)。心臓手術に比べ開胸術ではないので、患者さんの負担は少ないですが、治療が安全に行えるかどうか、慎重に吟味する必要があります。
図1:井上バルーンによるPTMC
文責:八島 史明、林田 健太郎