バルーン肺動脈形成術 BPA(または経皮的肺動脈形成術 PTPA)

ばるーんはいどうみゃくけいせいじゅつ BPA (けいひてきはいどうみゃくけいせいじゅつ PTPA)

はじめに

慶應義塾大学病院循環器内科の心臓カテーテルチームでは、低侵襲であるカテーテル治療を積極的に行っております。

慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)(または、経皮的肺動脈形成術(PTPA))は、低侵襲で入院期間が短く、有効性も高い優れた治療です。

本疾患および治療でお悩みの患者さん・ご家族がおられましたら、お気軽にご相談ください。

慶應義塾大学病院循環器内科
川上 崇史

■問い合わせ先:循環器内科 毎週火曜日午後 循環器内科25番 川上医師外来


バルーン肺動脈形成術 (BPA, balloon pulmonary angioplasty)

 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、器質化(古い)血栓が肺動脈を慢性的に狭窄・閉塞する病気です。広範囲の肺動脈が狭窄・閉塞すると、肺動脈圧が上昇して心不全を発症します。早期に適切な治療を受けなければ、生命に関わるといわれ、国が難病認定しております。肺動脈の近位に血栓がある中枢型CTEPHの場合、外科的に血栓を摘出する肺動脈血栓内膜剥離術(PEA)を施行することができます。しかし、肺動脈の末梢に血栓がある末梢型CTEPHでは一般的に外科手術が困難といわれております。また、年齢や他疾患の合併のために全ての患者さんが外科手術の対象とはなりません。
 近年、肺動脈の狭窄・閉塞をバルーンで拡張するカテーテル治療(バルーン肺動脈形成術:BPA)が有効であることがわかりました。BPAは複数回、行わなければなりませんが、外科治療と同様の改善効果があり、中枢型や外科手術が困難な末梢型に対しても実施することが可能です。また、年齢制限もありません。有効性が報告されているBPAではありますが、新しい治療であり、治療効果や治療後の経過など、十分な経過観察が必要です。慶應義塾大学病院では、BPAの短期・長期の有効性について検証しながら、慎重に治療を進めております。


慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療法

 薬物療法は治療の基本であり、多くの患者さんの症状を軽快することができます。しかし、病気は進行性であり、早い段階で治療専門医が外科手術またはカテーテル治療が必要なのかを検討するべきだと考えます。必要であれば、早期に治療を受けるのが望ましいと考えます。なぜなら、進行してからでは治療が困難になるからです。我々は、患者さんがどのような治療法を希望されているのか、どの治療法が一番良いのかを十分に検討して治療方針を決定していきます。慶應義塾大学病院では、外科手術・カテーテル治療の双方の術者と相談することができます。

1.薬物療法・在宅酸素療法
抗凝固療法(ワーファリン)や肺血管拡張剤は治療の基本です。しかし、薬物療法のみの治療は効果が限定的です。また、低酸素血症に対しては在宅酸素療法も行います。

2.肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)
全身麻酔下で胸骨正中切開を行い、外科的に器質化血栓を取り出す治療で根治術の一つです。歴史があり、血栓が中枢にある中枢型CTEPHには特に有効です。

3.バルーン肺動脈形成術 (BPA)
局所麻酔下で行う低侵襲性のカテーテル治療です。中枢型のCTEPHに加えて、高齢者、全身麻酔が困難な場合、末梢型CTEPHに対しても治療することができます。複数回の治療によりかなりの改善効果を得ることができます。


当院のBPAの実際

 通常、右頚部を局所麻酔し、頚部からシースを挿入します(図1)。シースからカテーテルを入れて肺動脈の病変近くまで進めます(図2)。カテーテルで肺動脈を直接造影し、狭窄・閉塞病変を詳細に確認します。確認後、狭い部分に細いガイドワイヤーを進めて、血管内エコーで病変の状態や血管の太さを確認します(閉塞の場合、かなり固いガイドワイヤーを必要とすることがあります)。当院では積極的に血管内エコーを行っており、安全で適切なサイズのバルーンを選択することに役に立っております。血管内エコー後、バルーンで病変を拡張します(図3、図4)。同様に肺動脈の複数の病変をバルーンで拡張するため、BPAは入室から帰室まで1時間30分~2時間かかります。
 集中治療室で術後管理をさせていただきます。経過が良ければ、1日で集中治療室から一般病室へ戻ることができ、歩くことも可能です。個人差はありますが、BPA後、5~7日で退院が可能となります。

治療により肺高血圧が改善した後、定期的に右心カテーテル検査、肺動脈造影を行い、治療の効果を評価していきます。


図1.頚部からシースが挿入されている図
図2.肺動脈の病変近くまでカテーテルを進めている

図3.病変内にガイドワイヤーが進み、バルーンで拡張している

図4.左下葉のBPA前後の血管造影

小切開心臓手術

最大の特徴は、「小さな創で患者さんに優しい」手術を行っていることです。当院は、低侵襲心臓外科手術、ポートアクセス手術のパイオニアとして、日々技術革新を進めています。

大動脈
ステントグラフト

開胸や開腹を要さない低侵襲な治療法。当院は、国内有数の豊富な大動脈瘤治療実績を有し、特にこのステントグラフト治療は人工血管手術とともにトップランナーとして近年さらに増加し続けています……

心房中隔欠損のカテーテル治療 AMPLATZER

慶應義塾大学 心臓血管低侵襲治療センターは、循環器内科と心臓血管外科が協力し、日本一患者さんにとって優しい治療を提供します。

経皮的中隔心筋焼灼術 PTSMA

症状のある、薬物治療抵抗性の閉塞性肥大型心筋症に対して、カテーテルを使用して純エタノールにより閉塞責任中隔心筋を焼灼壊死させる治療法です。最大の特徴は「低侵襲性」(体力の消耗や傷口が小さい)です。

バルーン大動脈弁形成術BAV

とてもシンプルな治療法で、すぐには開胸手術が難しいような状態の悪い方であっても、この風船治療を行うことで状態が一時的に顕著に改善されます。

経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI

重症の大動脈弁狭窄症で、開胸手術による治療が不可能または 非常に困難な患者さんに対する全く新しい治療です。大動脈弁をただバルーンで拡張するだけでなく弁を留置してくる治療法です。

経皮的僧帽弁裂開術 PTMC

カテーテルを用いて足の動脈から直接心臓に到達、硬くなった弁にイノウエ・バルーンを運び、そこでバルーンを広げて、硬くなった僧帽弁を広げる治療。心臓手術に比べ開胸術でなく、患者さんの負担は少ない。

バルーン肺動脈形成術 BPA

局所麻酔下で行う侵襲性の低いカテーテル治療。PEAの適応外とされる高齢者、全身麻酔が困難例、末梢型のCTEPHに対しても治療可能である。複数回の治療により、PEAと同様に根治が期待できる。

慶應義塾大学病院 心臓血管低侵襲治療センター
Keio University School of Medicine Medical Center for Minimally Invasive Cardiac Surgery

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